TCG業界分析〜その2TRPGの衰退とMTGの隆盛〜

 一時はテーブルゲーム業界を席巻するほどのブームとなったTRPGですが、その後衰退していきます。それにはいくつかの理由がありますが、1番の理由は商業的に儲からないということです。TRPGもSLGと同様に、1冊ルールブックがあれば4〜5人の人間が継続的に長時間遊び続けることができるため、プレイヤー人数が多くなっても収入に直結しにくいのです。こうして新製品を出す⇒儲からないから撤退する⇒新製品が出ないので人口が減るという悪循環によりTRPGはその優れたゲーム性にもかかわらず衰退していきます。
 そのほかの原因としては「開発コストが高い」「遊んでいる場面を外から見たときに怪しい」「過当競争による品質の低下」などがあげられます。特に女の子にもてたい学生世代がターゲートであるにもかかわらず「遊んでいる場面を外から見たときに怪しい」というのはかなりの減点要素といえます。
 こうしてTRPGが衰退していたころ、その潜在的プレイヤーに対してヒットしたのがMTGです。当時そのゲームの持つ先進性は群を抜いていました。一番の功績はテーブルゲームが共通して持っていた収益性の低さをなくしたことでしょう。これには賛否両論あるのは承知していますが、収益を上げるビジネスモデルを構築したことで、業界規模を飛躍的に広げたことには高い評価を与えるべきです。
MTGが開拓した商品性には次のような点があります。

「多くのカードセットの中から自分のデッキを構築する概念」
⇒ゲームの自由度を広げる効果があり、ゲームをプレイしていない間もゲームを遊ぶことができるというTRPGからの利点を売り上げにつなげることができることが秀逸。

「トレーディングカードとテーブルゲームのゲーム性の融合」
⇒上記とほぼ同じ内容。パックをあける楽しさ、ゲーム性、収益度向上の組み合わせ。

「簡素な基本ルールとカードに記述する個別の特殊ルール」
⇒簡単にはじめることができ、奥が深いというゲームに限らずすべてのエンターテイメントに求められている要素をテーブルゲームが満たすためのキーパーツです。後継のTCGでは無視されている場合も多いのが謎。

「カードを縦から横にすることで状態の変化を示す概念」
⇒これは探したんですが先達を発見できず。とりあえず本当ならテーブルゲームのルールとしてかなり重要な発明。

 よりミクロな話になりますが、60枚デッキ同一カード4枚制限1ターン1ドローという黄金比率の設定などもこの中に含めるべきかもしれません。

 また、MTGは以前のテーブルゲームから次のような点を踏襲しています。

「イメージ重視のゲーム性」
「リソースを管理を初めとする統計学、ゲーム理論を基にしたゲームバランス設定法」

1つ目についてはともかく、2つ目の要素の発展には大きく貢献しています。

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 ここではSLG⇒TRPG⇒TCGという流れで紹介していますが、これは日本(多分アメリカも)における展開についてに限定される話です。さらに他国の状況の推移を知りたい方はここをご覧ください。非常に優れたサイトさんです。

http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hourei/game/news/index.html

 なんか世界的なテーブルゲームの歴史をまとめた本とかないのかなあ。ゲームシステムの分類とかも欲しいよね。
またここのこの日記の情報は聞きかじりのものが多く、すべてに裏を取っているわけではないので間違いがある可能性に留意してください、ととりあえず逃げ口上を。
 それにしてもこのシリーズいつになったら本題にいけるんだろうか・・・

「追記」
 本文中て収益性を上げた点を評価するべきとした理由について

 これはゲームのみならずすべてにおいて言えることなのですが、資金が多く集まるということはそれだけ多くの労力を費やすことが出来ます。よく言う「景気がいい」状態というのは人々がたくさんのものを生産し、たくさんのものを消費している状態のことをいいます。これはこれ自体非難されるべきことではなく、皆が皆を互いに幸せにする努力をしていることを示しています。
 本質的にはこれで正解なのですが、大量生産大量消費は非難される場合があります。その過程で生まれるごみが増えたり、エネルギー消費が増えたりするからです。また、副次的要素として資金が大量に集まるシチュエーションが多い場所に監視が行き届きにくくなるため、不正が横行しやすくなるというのもあります。
 つまり視野を広げて人間以外の幸せを考慮に入れたり、1世代限りではない長期的視点にたって見るとデメリットのほうが多いのではないかという意見があるということです。これはかなり説得力のある意見で個人的にはこっちの意見の方が好きなんですけどね。「みんなでのんびりしようよ」って感じで。まあ今のところ多数派ではないようです。資金が集まるシチュエーションが減ると困る少数の人が多くの力を持っているうちは少数生産少数消費の実現は無理でしょうし。
 もともと通貨というものは物々交換では不便なため、生産物の変わりに流通させているいわば代替物ですから、それ自体にはほぼ何の価値もありません。グローバルスタンダードにおけるマネーゲームなど百害あって一利ないのです。人々の生産物を不正に簒奪しているに過ぎません。この辺りが資本主義とかもっと本質的なところでは通貨経済の限界点でもあるんでしょうか。なにか良い解決方法とそれを実現する現実的な手段があるといいですね。
 だいぶ脱線しましたがまあ収益を上げるのは悪いことではないです。その方法と資金の用途に問題がある場合が多いだけの話なんです。

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